「省エネ住宅」リフォーム活用法 パート2

森下 吉伸

こんにちは。森下です。
寒暖差が大きくなり、ようやっと秋の気候を感じられるようになりました。

さて、今回も前回に引き続き「「省エネ住宅」リフォーム活用法」についてお話しします。

エアコンだけで考えても


たとえば、通常の家だとエアコンが3台あるとする。
エアコン3台×30年(暖房負荷40kWh/ ㎡)ぐらいであろうか。
このぐらいのイニシャルコストがかかるとする。

もし、新築から解体まで3回買い換えるとしたら、1台15万円だとすると、3台×3回で135万だとする。
しかし、負荷を倍にしようとすると5台はいるので225万かかる。90万円の差額がある。

暖房費用においては計算すると112.5万円なので、負荷を倍にすると247.5万円なので135万円の差額がある。
両方で225万円の差がある。
暖房負荷をエアコンであげるにはこれだけ費用がかかるが、これは窓の仕様を上げることでなんとかなるのである。

もっと大きな効果で見るなら、ニューヨークにあるエンパイヤ−ステートビルでは6500枚の窓をトリプルガラスへ移行した実例を聞いた。

総工事費は19億円かかったといわれるが、エアコンなどの光熱費では毎年4.2億円も節約できているという。
これだと4.5年で回収してしまうのだ。トータルコストという考え方でいくとどちらがいいのかはスグに分かる。

しかし、日本では工事をするとき費用を圧縮することがすべてで、最初にお金をかけてトータルコストを削減することは二の次だが、よく考えてもらいたい。
本当に顧客の身になればどちらがいいのか?

 
 

トータルコストの削減


では、省エネになる工事、つまり、トータルコストを下げる工事をもう少し考えてみたい。
断熱性をあげるのがまず大切だが、気密性も必要である。

ほとんどの家では、性能の高いエアコンによっていくら部屋を暖めても、外に抜けている事が多い。
温かい熱は上にあつまり、それを下へ持ってくと効率がいいが、多くの家では気密性が悪いので、天井から小屋裏などへどんどん抜けていくのである。
よって、下に熱がまわらずに、どれだけエアコンを回しても床がいつまでも寒いのである。

床が寒いことで体感温度を下げることになり、数々の支障をきたすことになる。
この気密が悪いということで、性能の悪い窓とあいまって部屋の環境を悪いものにしている。

それに合わせて、多くの家の床は複合フローリング(樹脂ねり)なのでさらに寒さを増しているのである。
それを防ごうと床暖にするわけだが、その費用は40万円から70万円はかかる。

しかし、その費用を壁天井・窓の高断熱化と高気密化に使うことで防げるのである。
しかも、床暖はのちのちランニングコストがかかるが、その後のコストがかからないのである。

また、つかう暖房器具においても違いはある。1番いいのはエアコンである。
気密性と断熱性をあげれば、もっともいい暖房器具となる。

たとえば、エアコンのエネルギー代が8円だとすれば、灯油ヒーターなら9.8円、ガスファンヒーター13.3円といった比較になる。
それが、電気ストーブ・こたつ・電気カーペットなら24円に跳ね上がるのだ。
まさに3倍も違う。
しかし、一般的にはこの3倍も高い経費を使う人が少なくないのである。

 
 

日射遮蔽と屋根の遮熱できまる


また、先に窓の性能によって倍もエネルギーがちがうという話をしたが、窓の性能と合わせて遮蔽も大切である。
これは、大学で建築の勉強をしてきた人なら「テスト問題に必ず出る」といわれるぐらい基本事項なので頭には入っているはずだが、実際にリフォームで提案しているのかと言われると、例は少ない。
日射の遮蔽といっても、部屋うちでするのではなく窓のそとで日射遮蔽をするのである。これによって効果はぐっと上がる。

まず、サッシの性能を世界の基準程度に上げる。
いまの日本で使われる一般的なサッシのU値は4.65程度である。

では海外はどうか?
ドイツに至っては最低レベルで1.3が決められている。
日本と全く基準が違う。
お隣の韓国でも2.7、中国でも2.5(まもなく2.0へ)なので、日本がどれだけ基準が低いかが分かる。
それらの国と比べると温暖な日本であるとはいえ、実際に寒さにおいては支障が出ているのだ。油断してはいけないのである。

また、屋根の遮蔽においては、一般的にはグラスウールにて断熱することが多いが、暑さ100ミリ程度をつかうことが多いのではないか?
しかし、それなら計算上は664Wも熱が入って来る。664Wというとストーブ並みだ。
それを200ミリにするだけで332Wになる。これだけでも全く違うのである。

つまり、ここまでの話を結論として言うと、樹脂サッシ、高気密、アウターシェード(遮蔽)となるのである。
性能のいいサッシ、気密性をあげること、そして、遮蔽にまつわる考慮をしていくことが省エネには重要なのである。

 
 

住宅貧乏にならない6つの必修



では、省エネ住宅にリフォームしていく為に必要な項目を、あらためてあげてみる。

①高断熱
②高気密
③冬の日射取得
④夏の日射遮蔽
⑤給湯器の選択(エコ給湯)
⑥エアコンが効く家

この6つの項目は全てやらないと効果がない。
1つでもはずすと、お客様はトータルコストがあがり住宅貧乏になってしまうというのだ。

さらに付け加えて言うと、本来断熱はセルロースファイバーが1番いい。
グラスウールから変えられるならそうして欲しい。

もし、グラスウールを使うなら袋入りはだめである。
キチンと効果が出るような施工ができないからである。
しっかりとグラスウールを充填して、上からシートをはる施工方法を実践してもらいたい。

 
 

住宅の性能に統一基準がない


現実的には、快適さ省エネといったことは、必要だと言われながら何の進化もない住宅業界。
しかし、住宅メーカーなど各社とも自社の住宅の性能をいろいろと表示している。

しかし、統一した基準がないのである。
各社バラバラで自分たちの有利なものでやっているのだ。

たとえば、車なら細かく性能を比べられる基準を多く設けているが、そうはなっていない。
車は燃費にこだわるが、なぜ、家はこだわらないのか?

2009年以降、売れているのがプリウスのたぐいの車。
しっかりとした性能の表示があるので、高くても性能のいいものは売れている。

家に関しても、キチンとした性能表示ができれば、ユーザーも性能と値段によって判断できるのだ。
もっとも、住宅においてもそれに匹敵する数字が出せるようにはなっている。
日本はエネルギーがない国だとCo2の削減に関して指標が作られているのだ。

しかし、それはユーザーが住む快適さをはかるものではなく、国として対外的な基準なので意味がない。

ただ、国内でもユーザーの快適さ、省エネを考えた自社基準を設けている会社もある。
スウェーデンハウスや一条工務店がそうである。
年間暖房負荷100が積水ハウスとしたら20ぐらいの数値である。まさに5倍の性能の違い。

価格は確かに安くはない住宅だが売れているのである。
購入時に割高であってもトータルコストでみるとかなり節約できるというのである。
そして、そういった観点で住宅購入を考える人が増えているということなのだ。

 
 

ゼロエネルギー



ただ、これからは基準の統一化が進む。「共通の義務化」2015年パッシブハウスのレベルを義務化するし、2020年までにゼロエネルギーを義務化することになっている。
これは、新築、中古、不動産売買時に義務づけされるので、いやがうえにも住宅の性能をあげなければいけないのだ。
もう、省エネ住宅というのは、ある会社が販売戦略の一環でやるものではなく、だれもが取り組まなければならないことになる。

そして、できるだけ早く自社の考え方や、社員への教育を終わらせていなければ、取り残されるのである。

新築業界と違って、リフォーム業界は、こういった世の中の流れに対して敏感ではない企業が多い。
もちろん、市場が充分成熟してから取り組むのもいいが、これからはそうもしていられない。
それは、あらゆる大手がリフォームに進出してくるからだ。

彼らは、地場リフォーム店より、時代に流れをリードしようとする傾向があり、この省エネ住宅については、当たり前のように提案してくるのである。
ちょっと先の時代では、営業マン同士の戦いで、時代にそった提案ができなければ負ける可能性は高いのである。

家づくりの根源的な目標は、経済性、健康快適性、子や孫の幸せ・・・家族の幸せである。
お金が時代では経済性が特に重要となる。

リフォーム(家づくり)にとっての経済性とは工事費と維持費である。
健康快適性とは温度と湿度なのである。

「とにかく購入時に安くする」といった、いまの利点だけで売るのでなく、今後30年というスタンスの中で費用を使わない提案をするのがプロの営業マンではないか?という時代になるのである。

 
 

高断熱リフォーム巨大市場となる



そうなると、いまの既存住宅の性能をみると、省エネ時代になるとすれば、リフォームが持つ断熱需要は、巨大な市場となるのである。
なぜなら、いまの日本で高断熱状況は以下の通りであるからだ。

①無断熱    39%
②555基準  37%
③H4基準   19%
③11基準   5%

これを見ると、現存するかなりの住宅に需要があると見える。
既存住宅年率3%で高断熱すると、たぶん窓リフォームには年間150万戸の潜在需要がある。

そして、そのターゲットは高齢者であり、まだまだお金を持っているゾーンである。

 
 

さいごに



今回は、省エネ、断熱、といったことで、住宅自体の性能を上げて、トータルコストをさげ、快適な生活を提供することが、リフォーム業界にも重要なポイントであるといった。
これは、これまでのシロウトリフォーム屋がはびこった業界を信頼の置けるプロ集団にしていくきっかけにもなるであろう。
新築業界もそうだが、営業マンがシロウトすぎた。
なにも分からなくとも売れたのが間違いなのだが、なんの家に関するプロでなくともなんとかなったことが間違いであった。

これから求められるリフォーム会社は、安さやチラシの出来ではない。

まず、プロとしての提案ができるかどうかである。
そして、実際のものがいいかどうかなのだ。
もののよさは、すなわち現場力である。キチンとした現場ができているか、そして、実際に住んだ方から「工事に満足している」といわれているかどうかである。

これからもリフォーム参入業者は多いであろう。
新規の取り合いはさらに拍車がかかるのである。

では、我々がどう差別化するかというと、もうOB客様しかいないのである。
ここを通じて次の仕事をとることが、一番有利な戦いなのである。

世の中は、メンテナンスの時代に入ると言われている。

もう、大量消費の時代ではない。
新しいものが買えない時代。

そして、お金を使わず生きていくしかない時代である。
そこには健康もある。寝たきりになるのは避けたいのだ。
元気でコロッと死ぬ、というのが冗談ではなくなるのである。

それには、命や健康を守るメンテナンスはかならず需要が広がる。
そこには、今回伝えたリフォームの方向性はあっているのである。


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