こんにちは。森下です。
さて、今回は「人生の豊かさについて パート1」についてお話しします。
活気があるベトナム
数年前、人材採用の件でベトナムにいったのだが、そこで感じたのは国全体の活気とベトナム人の素朴な真面目さだった。
ベトナムはまだ発展途上国であり、街は高層建物とバラック小屋のような建物が混在している。
道路は凸凹で舗装もままならないし、乱暴な運転のオートバイ社会で危なかった。
しかし、とにかく元気があって人々が明るい。
日本でいうと昭和30年代から40年代のようだ。
これから成長するといった空気が蔓延している。
地元の人に聞けば、国民の平均年齢は20代だという。
高齢社会に入る日本とは真逆で若さがあふれている。
国民に行動力と可能性があり、まさに、高度成長時代の日本である。
物価も安く(車は高額だが)、ランチは200〜300円あれば充分。
今の生活は決して裕福ではないが、明日への熱い希望は感じられた。
「日本で働きたい」と思う若者は多く、豊かな未来における期待が、真面目に仕事をしてしっかり儲けたいという気持ちに現れていた。
前提が変わった日本
一方日本はどうだろう。
日本のGDP(国内総生産)は世界で3位。
先進国である。
なのに、「多くの日本国民は豊かさを感じていない」とネガティブな統計を見る事がある。
なぜだろうか?
おそらくGDPの指標が国民の豊かさと比例していないからであろう。
かつての日本は、国の勢いと国民の希望が、ある程度比例していたと思う。
だから、国内の生産量が上がれば、必然的に国民の満足度も高くなった。
いまは事情が違う。
おそらく前提が変わっているのだ。
つまり、「生産量が上がれば国民の満足度があがる」という前提が、「GDPは企業収益によって表され、国民のお金とは関係ない」となった。
企業収益は会社経営者や株主など富裕層は関係あるが、中流家庭(なつかしい言葉…)といわれる層には関係はない。
GDPが高いのは、単に企業利益が高いことであり、中流層の給与が高くなるということではない。
むしろ、企業利益を上げる為に、従業員の給与を下げているかもしれない。
富裕層との格差を益々増やすことになって、中流層や貧困層の満足度は上がらないのである。
企業利益が上がると国内が豊かになった日本では、GDPが上がるとインフラが整備され、国民サービスも増え、毎年サラリーマンの給与が上がり続けた。
そのことで国民は幸せを感じ、それぞれが明日の幸せを目指した。
そして、さらに消費が増え、活気と豊かさも上がった。
消費と豊かさは比例しているのである。
一方、いまの日本情勢では消費ができない。
「消費より貯金」なので、豊かさの指標が変わっても不思議でないのだ。
日本はGDPでみていた「国民の幸せ指標」を見直さなければならない。
やりがいがある社会
では、どうすれば日本国民は豊かさを感じることができるのか?
経済状況だけでなく「中国や韓国との小競り合い」「北朝鮮からのミサイル」という脅威があっても「日本は豊かだ」といえるのか。
それにはベトナムのようにお金がなくとも国民に活気が必要ではないか。
それには、今一度、純粋に「働く」ということを考えなおしてもいい。
まじめに労働する大切さを見つめ直し、自分達が本当にやりたいことを見つける。
それを達成することでやりがいを感じるのである。
アメリカでは労働を減らしボランティアをする若者が増えたと聞いたことがある。
人間関係が希薄な職場では感じることができない自己実現を、ボランティアで手にしたいということだ。
お金だけでは幸せは手にできない。
「感謝」「人とのふれ合い」で得られる「心の豊かさ」が欲しいというのだ。
そして、このことは個人の満足だけでなく、結果的に社会貢献になった。
ボランティアが大きなお金に換算できるメリットになって街全体にプラスを与えたのだ。
私利私欲だけを追求しないことが、自分達の住む街を豊かにし、その恩恵を個人が受けることになったのである。
先進国は、お金を求めた結果、お金を手にできない人が多く出た。
この例はお金だけを求めなかったことで、むしろ豊かになったのである。
私たちはお金にこだわりすぎると他の価値が見えなくなってしまう。
お金というのは「無意味な物欲」「贅沢」「より便利な世の中」を求めるということである。
そして、気がつけば、活力ある労働者がどんどんいなくなっているのである。
ベトナムの労働者はお金持ちではない。
しかし、自分自身で「明日は豊かになろう」という希望があって労働意欲が高いのである。
私利私欲だけでなく「家族、親、親族のためにお金を稼ぎたい」と考えている。
このことが活力になって将来の可能性を高めているのではないか。
成長がすべてではない
つまり、お金を求めるだけではお金はたまらない。
もっと、労働のスタンスも大切だといいたいのだ。
であれば、経済の成長がこれからも必要かどうかは分からない。
また、現実を見ると、多くの先進国では、成長を重ねた国の国民で、幸福感を得られるのは、ほんの一握りの国民だからである。
たとえば、アメリカでは数パーセントの富裕層がアメリカのお金の大半を持っているといわれている。
何十億、何千億といった年収が数パーセントいて、300万円程度の年収が半分以上だというのも珍しくない。
「お金だけではない社会が理想だ!」という言葉は昔から言われていた。
しかし、実際にはお金を意識する人ばかりである。
きれいごとだと耳を貸す経営者は少なかったであろう。
しかし、こうした考えに限界が来ている。
成長路線を歩き続けた日本でも、国際的なIT競争に後れを取り、成長の方法を見失っている。
それでもITは突き進めるが、旧態依然とした企業は低迷している。
人材も集まらないし、労働者を活性化することもできていない。
純粋な希望を持つ労働者が減り、危機感も薄れ、経営者も労働者も無能化・無力化になった。
そして、ストレスを極端に嫌い、人間関係を簡略化することを進め、人間同士の関係からくる感謝や喜びから遠ざかる人が多くなった。
人手不足ともからんでパソコンやロボットと交流することで突き進もうとしている。
これも活力を失い、人間力を衰退させているのだと思う。
やはり、人と社会のあり方を見直さないといけない。
人間が共同生活する意味がなくなるし、もっといえば企業さえも存在する意味がなくなってしまう。
まさにソーシャルキャピタルが必要である。
いまさらながらソーシャルキャピタルを考え直したいのである。
貧しい国の方が、豊かな国より豊かだという
いままで書いたことから日本の振り返る道をそれぞれに考えて欲しい。
先進国より、発展途上国の方が、活気がある。
お金は少なくとも、生きている実感があって、幸福感を感じているのである。
実際に国民意識を調査した資料をみても、この考えに説明がつく。
数年前の全世界での「幸せ指数」の調査結果をみると、上位は、コロンビア、フィージ、サウジアラビア、ベトナム、アルゼンチンといった国だった。
反対に指数が低いのが、イタリア、ギリシャ、イラクなど。また、韓国、フランス、日本を含む多くの先進国も低い数値であったのだ。
また、「幸せ指数」が高い国は、「希望指数」も高い傾向がある。
希望指数とは「明日は今日よりいいだろう」という期待だが、いまの日本にそういった期待が国民の心にどのくらいあるだろうか。
「いま貧しいから、もっと豊かになりたい。そのためにしっかり働きたい」というのが途上国だとしたら、日本は「いまはそれなりの収入があるが、もっとラクしてお金が欲しい」という人が多いのではないか。
同じ欲求でも質が違う。
「うちの会社の社員は、やる気がない」「給料払っているほど働かない」と愚痴る社長は少なくない。
それは成長やお金を重点におくばかり、活性化されない社内になっているのかもしれない。
本当の意味で、やりがいの持った労働ができるためにはどうすればいいのか。
労働者がまじめに、その気で、一生懸命働くには、企業としてどうすべきなのか。
といった前提を自社なりにつくり、忘れないでほしいのだ。
さいごに、石器時代に暮らす人類は、その時が決して不幸だとは思わなかったのではないか。
むしろ、豊かな時代であったと思う。
猟に出ても必ずしも獲物が捕れたわけではない。
なければないなりに生きる工夫をした。
隣の住民との比較をすることもなく、自分達の家族の中だけで得られる満足を追っかけた。
不自由であっても楽しく、豊かであった。
豊かさとは、利便性やお金の量だけでない。
家族や人間のつながりが決定づけるものなので、もう一度企業のあり方を考え直して欲しい。
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