売れるリフォームの値付け

改野 里絵

先日、ヤマダ電気に偵察にいったら、あの手この手の特典に驚きました。さすがは価格競争の先駆者、「ここまでお得なのか!」と感心しました。

買ったのは洗濯機。ほら、いま流行りの横からふたを開けて、洗濯物を出し入れするやつです。しかも、水で洗うだけでなく「ナノイークリーニング」というもので、匂いや風合いまでも正常に戻すような機能が付いているのです。

なにに驚いたのかというと、他社の家電ショップより一番安い価格というのは当たり前。しかも、今、買うと空気清浄機が付いてくるというのです。後から確認すると、定価2万円もするものなんです。(ただ、その清浄機は定期的にフィルターを交換しないといけないので、それを売って継続的に儲けようという腹なんでしょうが)

そのサービスに、うちの女房は大喜び。そのうえ、その金額相当のポイントが付く。

ここまで喜ばすものですから、少しお金を余分に出さされて保証期間を延ばす申し出にもすんなり承諾するありさま。でも、得だと喜んでいます。

また、このポイントがさらにうれしさを盛り上げます。同じ日に、洗濯機以外にも、ひげそりや、子供のオーディオヘッドフォンまでも、すべてポイントで買えたのです。ここまでやられると、かなり異常な性格か、変質者でもない限りは、だれでも喜びますよね。この店で、買ってよかったって。

そして、後日、まだ残っているポイントを使いに、再度お店に訪れて、またもや、よけいなものまで買ってしまうのです。

このやり方は、人の心理を上手に誘導するやり方です。しかも、結果として、売れ残ってたたき売りするのなら、できるだけシーズンに商品を売り切ることができるほうが、利益が出るという利点もあるはずです。

これによく似た話で、東京の日本橋にあるサカゼンという店があります。東京近郊に数店舗持っているディスカウントストアーというよりは、問屋が小売をしているといった店。インポート商品、ブランド商品が格安の価格で売っているのです。

この店のやり方を見ていても同じです。

もともとインポートの洋服などは、イオンなどの郊外ショッピングモールにある日本製の服と比べるとケタ外れに高いのです。5000円で買えるデニムでも、インポートの有名ブランドになると10万以上は軽くします。見た目も、履き心地、耐久性もほとんど同じですが、価格がやたら高いです。 サカゼンも、40%~50%ぐらいは当たり前に安売りをして、ポイントを付けていますが、それよりも驚くのが、シーズンが終わったあとのバーゲンが、以上に安いのです。

たまたま、東京の新宿で仕事を終えて、新宿3丁目の駅周辺で昼飯を食おうと、徘徊しているときに、この店をみつけて何となくはいってみたのです。すると、驚いたのが、ドルガバのデニムが80%オフになって売っているのです。

「安っ!」と、ついつい買ってしまったあとに、なんでこんな値段で売るのかと聞いてみると、シーズンが終わりモデルが変わると、新しい商品をみんな買うので、残り物はまったく売れないというのです。

そんなことはないだろうと思ったのですが、よく考えてみると、こういった高価なものを買いたい人は、高いから買うのです。しかも、新しい、だれもまだ持っていないから。なので、安くなって、古くなると買う理由がないということだと思ったのです。

中古や質屋以外でブランド品を買う人は、こういう層なんですね。ちょっといいモノを安く買いたいと思っている人は多いいので、たしかにそれは一部の人でしょうけど、その人たちが上げる売り上げはかなりだということです。

ある種、8対2の法則でしょうか。

もっとも、定価より少しは安く買いたいでしょうが、新しいものを高い値段で買うことに意味のある人なので、安くしすぎると売れないということになって、それなら捨てるより捨て値で売るほうがましだということなんでしょう。

ここまで、捨て値にすると、節操のないあなたのように食いついてくる人がいることはわかっています。と言われました。(馬鹿にされて・・)

ここでいいたいのが、ヤマダ電気でも、サカゼンでも、共通してあるのが、一つ一つの商品ごとの原価と売値が合うかどうかということをあまり気にしていないということです。年間を通して、いくら仕入れて、いくら売れた・・その差額がいくらなのか、が重要なんでしょうね。

だから、高価なものをタダでプレゼントしてくれたり、格安で販売したりが、常用的にできるのでしょう。

飲食店をみると、この考えがよくわかります。焼き鳥屋さんで、若鳥と皮、ヒネ鳥(親鳥)の串が同じ値段のわけがないですもの。スーパーの鳥屋さんに行くと、若鳥とヒネや皮は原価で5倍~10倍も違うと書いてありますから、同じわけが無いのです。

味や、他とのバランスなどで、値段をつけているので、原価の安いものばかり出れば儲かるし、出なければ儲からないといったことになるのです。

こういった、原価がいくらだから売値はいくらだといった考えでなく、お客様が買ってくれる価格はいくらなのかを考えているところが小売店・飲食店はすごいのです。

その点、リフォーム屋や工務店でのこれまでの風習は、原価管理をするときには、かならず1つ1つの現場で採算を合わすことを考えるはずです。建築屋としての原価管理スキルが上がれば上がるほど、これは常識的なことになります。

 

業界では正しいスタイルなんですが、このことが「請負業」としての弊害をもろに出してしまうのです。かならず、原価を積み重ね「この現場で損をしないように、危険も考えて価格を上乗せする」といったことになって、高い値段で、しかも原価がかかりすぎる(つまり職人さんに払いすぎる)ことになってしまうのです。

・・・ここまで、来ると、我々の業界が、他業種からの参入で、いままでのお客様を持っていかれてしまう理由がわかると思います。家電ショップや飲食店のような発想に、これまで我々の業界が持っていない感覚に、ひっくり返されてしまうのです。

考えてもみてください、いまのリフォーム業界で、うまくいっているところは、大手だと、不動産関係、住設メーカー関係、あるいは、建築の経験がない社長の起業とか、そういうところが圧倒的に多いですよね。それがその証拠です。

だから、いま、我々に必要なスキルは、まず、第一に、「売れる値付け」をすることです。そこには、どの商品も、同じ粗利益にする必要はないですよね。全体でどうなのかをみる。

そして、業界にある原価(各職種の実行単価)を根本的に見直すということです。

もちろん、1人工の金額とかは変えられないでしょうが、積算の根拠、単価設定を変えるのです。実際に、職人さんが、どうやって作って、そして、それに費やす時間がどのくらいかかって、そして、どんな材料が必要で、どんな工具を使って、そしてどんな危険が待っていて・・と、金額を上に上にのせていく積算はやめるべきです。

まず、売値から割り出すのです。工事は、決まっているでしょうから、売値に対する原価総額を出して、それを、これまでの積算した時の各工種の割合を参考に、割り振りなおすのです。そして、それを、「このパック商品をするときの単価」として、新たに作るのです。はっきりいって、結果的には単価を下げることになるケースが多いのですが、私の経験上は、まったく話にならない発注額になることはないと思っています。

公共工事の受注のように、単なる、予算が20%切られたから、発注も20%切るから・・といった昔ながらの値交渉だと限界がありますが、単価のあり方をもう一度見直すことはまだまだコストダウンの道があるのです。

職人さんに、これまでと同じことを繰り返ししている仕事のやり方を、「いつも、簡単に、早く仕事を進めるためにはどうしたらいいのか?」を考えさせ、少しずつ実行させるということができ始めるのです。

では、具体的にそれは、どうすればいいのかと思ったかもしれません。

あなたの会社でもできる「原価の見直し」はかならずあるのです。希望があれば、会の中で、一つずつ問題を解決しましょう!


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