待つという戦略 パート2

森下 吉伸

こんにちは。森下です。

 

年末に向けて、そろそろ慌ただしくなる頃であろうか。
残していることは今のうちに片付け、年末をゆっくり過ごしたいものである。

 

前回、「早く・安く」が当たり前の時代に、あえて「待つ」ことを考えてみた。
なぜ、待つことが良いのだろうか? 果たしてメリットはあるのだろうか?
ポイントを絞ってお伝えしていきたい。

 

待つという戦略_1

待つというメリットは?


スピードを意識しなくとも売れるのならそうしたい。それは分かった。
新規客でなく、既存客に対するアプローチであるとも分かった。

 

では、待つということで、本当に売上げを伸ばせることになるのだろうか?
そのためには、待つという価値観を上げなければいけない。
待つことはいやだが、待つとことがメリットだということもある。
先ほども少し触れたが、再度考えてみる。

 

「待ち遠しい・・・」この言葉はどうだろう?
楽しさが出ている。出来上がるまで、また、納期が来るまで、妄想などをしながら楽しむことはある。人によっては、待っている期間が嬉しく、実際に手に入ってしまうと興味がなくなり、知らん顔といったことがある。

 

「待っている間に考える事ができる」
これは、妄想をするだけでなく、あれこれまとまっていなかった自分の考えや、行動をまとめることができるというもの。だれも、自分が思っていることをすぐには言えない。自分の考えが分かるには、時間がかかる人が多い。それが分かるまでモヤモヤするだろうから、そのまま購入し使い始めても満足しないと言うこともあるだろう。心の落ち着き、納得感が生まれる。

 

リフォームを体験した人の2割〜3割は、引き渡し後に後悔している。
「もっと、考えていればよかった」「急ぎすぎた」と文句をいう。それらの後悔をまとめると、だいたいの人が「よく考えたらよかった」という。単に、考える時間が少なかったというだけだ。

 

待つという価値観のあげ方


待つという戦略_2

これらをみると、待つということで得られるメリットは、あるにはあるがそう強烈ではない。だから、新規顧客の競争には威力は期待できない。

 

しかし、既存客には強烈なアプローチはいらないので話は違う。
既存客には淡々とした方がいい。よって、この程度の微力がかえっていい。
また、待たすことによって、魅力を維持することもできる。待つという価値を上げていけばいいのだ。

 

既存客など関係が深まってくると、待つ楽しみを味わせる事ができる。
これだけでも価値が上がる。それに、こちらに気を遣ってくれるのだ。一般的には、顧客のいいなりになっていた方が、仕事はもらえるものだと思うかもしれないが、実は違う。

 

いいなりになっている会社ほど、つまらないことは言っても、肝心なことは言わない。いいなりにしている時点で、その業者のことを信用していないからだ。どうでもいいと思う気持ちもあり、見くびっていいなりにしている。

 

しかし、待たされるというのは、相手に気を遣う。
腹が立つこともあるが、ほとんどが逆に、相手に気に入られようとするのだ。
いったん手に入った女にはエサはやらないが、自分の言うことを聞かない手のやける女には、ブランドものを買ってやる、といったことも珍しくない。多くの男は、待たせる女に気持ちがひかれるのだ。

 

また、待たされるということは、明らかに相手に指導権があって、こっちはそれに従っているという関係になる。相手がどうでるか?それに合わさなければならない、という気になるのだ。こういった関係を、暗黙の内に成立させて、しかも、お互いがお互いを離すことはないのである。

 

待つことは営業マンにもいい


待つという戦略_3

待つという観点は、営業マンにとっても増やした方がいいことだといえる。
顧客を待たすこともいいが、自分も待つといった接し方をする。ただ、待つというのは「行動をゆっくりしろ」といった意味ではなく、顧客の話を聞くときの態度が「待つ」ということなのだ。

 

へんに事情を見立てて話を進ませない。顧客が言いたいことをいい、聞きたいことに答える。特にこちらから誘導しない。そして、顧客が自らの意志を確認して契約をしたくなるまで待っているということ。操作しない、誘導しない、という営業になるということでもある。

 

それと、もう1つが、待たせて勝てということ。
たとえば、巌流島で、武蔵が小次郎を待たせることで勝ったように。
待たせることで、相手をこちらのペースに持ってくることができるのだ。

 

先にいった、ローリングストーンズが顧客を盛り上げる為に待たせるというのもそうだろう。ステージの開会時間を何時間も遅れる。充分に待たせて、そして気分を充分に盛り上げ1番良いところを見計らって、ステージに飛び出していく。
待ち飽きて怒り出す、あと一歩のところまで登場を引っ張ることで効果を出している。驚くことに、ステージが終わるころには「さすがはカリスマ」とまた、次のステージも必ず行くと観客は大きな満足を手にしているのである。

 

待たせて過敏にさせる


待つという戦略_4

また、待ちきれない、という気持ちが出ている時には意識を引きつらせている。
この時は、誘導、誘惑のもっとも効果的なときだとも言われる。先ほど、操作・誘導はいけないといったが、それは顧客自身が、それをされていると信頼感を失くすのでいったのだが、ここでいう誘導・誘惑は、上手にこちらを振り向かせるということ。やはり、こちらに魅力を感じてくれないと、ものは売れないのである。

 

待つことで、どう誘惑できるのかというと簡単である。待っている時は、待つということばかりに神経が集中しているので、それ以外の情報がすんなり簡単に入れることができるからである。

 

例えば、怖い映画を見たとしよう。怖い話や怖い体験をしたでもいい。
こういったことは、相手を震え上がらせ、頭の中には怖いことばかりが入ってしまう。その時に、ちょっと部屋の隅で「コトッ」という音でもするとどうだろう。「わ〜っ」と絶叫し驚くものだ。たいていは神経が過敏になっている。そういう時のサブミナルな刺激に弱いのだ。

 

つまり、待っている人が、待つことばかりにとらわれて、頭の中が「待つこと一色」になっているのと同じ状態である。神経が過敏になっているのだ。こういったときも、ちょっとの刺激を、かなり深く入れることできる。

 

例えば、リフォーム見積をいくつも作らせて、どれにするかなかなか決めない人がいる。こういう人にも、待つという経験をしてもらう。こちらも急かすことなく、相手が決めるまで待ち続けるのだ。やらなくともいい人なら別だが、やりたい人なら、充分に待たせたなと感じた頃に「ふーっ」というため息や「つかれた」という声、また「きっと損するな」といったひとことは、強力な刺激となって、相手を過敏に動かすことにもつながるのだ。

 

さいごに


待つという戦略_5

今回の話は、わかりにくかったかもしれないが、縁故マーケティングの対応としては大切なポイントの1つであると理解してもらえればいい。そもそも縁故マーケティングというのは、戦術のひとつひとつは、どれをとってもたかがしれている事ばかりやっている。しかし、それらをやり続けることで、競合にマネの出来ない戦略が立てられるのだ。

 

もう一度、振り返って言えば、大量仕入れ、大量販売、大店舗、安売り、スピードが売れる秘訣というのが一般常識だろう。そこに、あえて高いものをゆっくり売る。これが競合企業の逆をいくということになるので強みになる。待つということも何気ないことだが、使い方によっては武器になるのだ。

 

これまで日本が歩んだ「クオリティーの高い商品作り」だけでは勝てない。もっといえば、良いものは他人に作ってもらい、広告やセールスを考えた方が勝てる。さらに今は、良い商品は前提として扱い、誰から買うのか? ということが重要な世の中になるだろう。

 

何度も言うが、待つということはたわいもない。
しかし、こういった細かい戦術が、これからの成功の秘訣になるといえよう。

 
 
 

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