とにかく勝負は人材である パート1

森下 吉伸

こんにちは。森下です。
卒業の季節になりました。
新しい年に向けて準備をしながらも、どこか寂しい気持ちも持ちつつ今という時間も大切に過ごして下さい。

さて、今回は「とにかく勝負は人材である パート1」についてお話しします。

世界からみた日本とは?


シンガポールの銀行が日本企業を相手にしなくなったと聞いた。日本人は簡単に口座が作れないというのだ。
これはマズイ。金融大国シンガポールで銀行口座をつくることは、グローバルな資産形成を考える経営者にとって重要なことである。
それなのに相手にされないとは。ただでさえ日本の経済状況が懸念されているのに、益々世界からの信用を落としてしまう。
この現実に危機感を感じている経営者も多いのではないか。

シンガポールの銀行側は日本と違って「預金者=お客様」ではない。
「取引に値する企業か?」「資金力は大丈夫なのか?」と審査に通過しないと口座を作ることができないのだ。
その観点で日本に対して厳しくみている。
たとえば、これまで約3億円で口座開設できたとしたら「日本在中の日本人だと10億円から」というように厳しくしてきたという。
くやしいけれど基準を上げなければ不安な存在なのであろう。なぜ、こんなことになったのか?

もう、「日本は終わった」と思われているのかもしれない。
残念だが。シンガポールだけではない、他の外国の銀行も日本から撤退しはじめたことからそう感じるのだ。
明治時代からあるシティバンクも、三井住友に個人部門を売却して日本から出て行くらしい。
驚きである。たしかに日本人自体も市場を国内から国外に目を向けるひとが多くなったので、こういった現象も不思議ではないのかもしれない。
ただ、長年の歴史がある銀行までも日本を相手にしなくなるというのが残念である。

また、この風潮は銀行だけでなく株式にも同じことがいえる。
ここ最近の事情をざっと見ても、日本企業の株から海外投資家は手を引いている現実が目に見えている。
ギリシャの問題で今後は円高傾向ではあるが、先行きは不透明である。
グローバル化がはやし立てられるこの時代に、日本の置かれる立場に厳しいものがある。
今回は少し外部からみた日本の状況から分かる考察をしたい。

 

 

囚人のジレンマ



海外から低い評価の中、まだラッキーなのが石油の値下げである。インフレ問題が下り坂になるからだ。
石油をつかった商品が多いので原価が安くなる。
そのことでインフレに影響を与え、生き延びる会社も多いはずだ。
しかし、こういったラッキーはそう長く続かないだろうと卑下する経営者も多いが、まだ石油は下がると言われている。
その理由を税理士の岡本史郎氏が「囚人のジレンマ」で説明していた。

「囚人のジレンマ」とはゲーム理論だが「共犯牢獄されている2人に自白させるためにどうやるか?」という方法論である。
そして最終的には「自分の利益を追求する限りお互いに裏切り合う」という結論にしかならないと語ったものだ。
たとえば、共犯牢獄されている囚人2人AとBに「自白すれば助けてやる」と言うとそれぞれがどう行動するか?

• 「Aは自白しない/Bも自白しない」
• 「Aは自白する/Bは自白しない」
• 「Aは自白しない/Bは自白する」
• 「Aは自白する/Bも自白する」

 の4パターンのどれかになる。それぞれの誠実さの度合いで点数表示があり、どのパターンで終えるのが自分にとって高得点で終えられるか?ということを考えるゲームである。

ただ、双方が自分の利益を追求しあうと、このゲームでの結果は1つである。「両方とも自白する」である。
最終的に自分の利益を考えれば、お互いに自白しかないのだ。この理論に石油業界が入っているという。
業界の競合同士が裏切りあっているというより、利益を追求し合った同士が値段を下げあっていると言い換えられる。
この戦いでは、参戦者のだれもが下げられるところまで下げるしかなくなるというのだ。

石油業界は、これまで秩序は守られていた。
しかし、競合会社のそれぞれが「自分が勝つ為」に秩序を冒しているのだ。まさにゲーム理論が始まっているのだ。
こうなると、お互いに底をつくまでやるしかなくなってしまう。いま、原油価格が40ドルだとすると20ドル台まで落ちる。
まだまだ価格は下がるのだ。なぜならゲーム理論の集結は「落ちるところまで落ちるしかない」からである。
世界の石油生産を独占しているヨーロッパ最大手のロイヤル・シェル・ダッチの卸原価が20ドル台なので、そこまで落ち続けるだろう。

こういった業界内で落としあう事実は日本でもあった。
よく例に出されるのが印刷業界である。
1980年〜1990年代に印刷業界は何千万という印刷機の開発があり、各社それへの投資が流行った。
「最新の印刷機を入れたのですが、いかがでしょう?」とあちこちでクライアント獲得の戦いがはじまる。
そして、新型機を償却していかなければならない会社同士が価格競争になる。
「ライバルより下げる。そして下げられたら、こちらも下げる」となり、これもジレンマに入っていく。

 

 

ジレンマは人材に影響する



いまは、こういったジレンマが、至るどころで発生する。
ただ、影響を受けるのは業績の善し悪しだけではない。
人材確保や労使においても受けるのだ。
国内市場にうまみを感じないのは、企業だけでなく労働者もそうである。
企業の中の労働者という常識から、個人責任ある労働者としてどう生きていくか?といった考え方を強化していく。
そもそも労使問題に対して、労働者の言い分が認められ訴訟に立ち向かわなくてはいけない時代である。人材確保にも影響するのだ。

1番の問題は求人難である。
世界各国とも、人がいないわけではない。
いい人材がいないのだ。中小企業においても求人をかけている会社は多い。
また、職を求める人も大勢いる。
しかし、慢性的に求人難になる由縁は、いい人材があまりいないのである。
お金をかけた求人活動でも、たいした人はやってこない。
ほんとうに求人がやりにくい時代である。いくらインフレが収まっても、ここにお金がかなりかかる。
人へのコストは増加しているのである。

リクルートなど、大手の求人サイトを利用する中小企業は多い。
しかし、実際にサイトからやってくる求人の大半はいい人材ではない。
不動産業界でいうとレインズのようなもの。
「レインズに登録されている土地はダメだ。あちこちに出回っており、いいものはない」というのと同じである。
良質で信頼のある土地情報は、地元の業者が隠れて持っているという。そういった感じである。

つまり、優秀な学生も市場に出て来ることなく、その手前で大学とパイプのある大手企業にとられる。
ここでも、ジレンマがおき、競合する企業同士がしのぎの削りあいをする。
これからは、過去の採用方法はよかったのであろうか?人材の待遇勤務体系などもこれでいいのだろうか?を自社なりに考え答えを出しておかなければならない。
いま雇っている人材が大切である。いま満足して雇用している人材こそが、我が社を救ってくれるのである。


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