なぜ、姫路の経営者は「きゃべつ」にいくのか? パート1

森下 吉伸

こんにちは。森下です。

さて、今回は「なぜ、姫路の経営者は「きゃべつ」にいくのか? パート1」についてお話しします。

「きゃべつ」というお好み焼き屋


全国から多くの経営者が姫路をたずねてくるが、彼らはほとんどがグルメである。

全国あちこちでうまいものを食っている。

金に糸目を付けない人もいて私もどこの店に連れて行くのか悩むことも多い。

そんな彼らから行きたいという店に「きゃべつ」がある。

なんとチープな名前であろう。

姫路駅から数分のところにある昔ながらのアーケードの下に、カウンターのラーメン屋や串カツの立ち飲み屋が集まる庶民的なスペースに店を構えている。

 「きゃべつ」はお好み焼き屋である。

関西の人にはわかるが、昔はだれの家の近所にもおばちゃんがやっているお好み屋があちこちにあった。

店を入ると大きな鉄板があって、その周りを丸イスで人が囲む。

鉄板の淵は20㎝ほどの幅があって、その狭いスペースに皿やコップをおいてお好み焼きを食べる。

「きゃべつ」は典型的なそういった昔ながらのお好み焼き屋だ。

ただ、横に二組ばかり座れる座敷があって広めではあるのだが。

 ここにこぞって姫路の経営者が集まる。

若い人だけでない。

もう70歳80歳と高齢になった地元名士や老舗会社のエグゼクティブたちが集まるのだ。

しかも値段がべらぼうに高い。

この間兄弟3人で、ちょっと食べて10万円取られた。

銀座の鮨屋なみの支払いである。

なぜ、こんなボロい店にエグゼクティブがいくのか?

店主のおかあちゃんと2〜3人のパートで高級店の料金がとれてリピートをさせるのか?

「なぜ、エグゼクティブはアラスカに集まるのか?」にもじって考えてみたい。

お好み焼き屋には不釣りあいなメニュー


「きゃべつ」は小さなお好み焼き屋であるがメニューは実に多様である。

お好み焼き、焼きそば、おでんは庶民的な値段がついて店内の壁に値札が貼り付けられている。

しかし、値段がついていない値札も壁に貼り付けられているのである。

たとえば、サバ、マグロ、ウニ、いくら、ふぐ、あなご、といった海の幸が満載である。

もともと店主が瀬戸内の離れ小島からでてきているので、新鮮な「前どれ海の幸」が直接この店にきているので活きがいいネタばかりである。

他には、神戸・三田牛、九州の豚や馬刺し、北陸の松葉蟹やアワビなど全国あちこちのおいしいものがいくつも用意されている。

日本酒も小さな冷蔵庫に銘酒と呼ばれる全国のお酒、世界中のワインが店主のチョイスによって用意されているのである。

値札が壁に貼り付けられていないものは値段が全く分からないのでチェックするまで金額が分からない。

それでも、店のオススメで言われたものを次々に出してもらうのが常連の食べ方である。

 お好み焼きだけなら安いのだが、ついつい他のものを食べてしまう。

うまいのでさらに次のものを食べてしまう。

「これおいしいよ」と言われるがまま食べてしまうのだ。

先日、姫路城を見学にきた西洋人アベックが色々食べてお勘定をみて「オーマイ・ガット!」と頭を抱えていた。

一生懸命「カード、OK?」とボディーランゲージで懸命に説得する黒人の姿を見たこともある。

支払いは「いつもニコニコ現金払い」なんともめんどうな店だが人気はいっこうに下がらない。

なぜかマスコミに取り上げられる


おかあちゃんは70代か。

いつものびのびのTシャツ。

かなりの肥満体だが豊満な乳房がシャツの下から透けている。

当たり前だが、まったく男性陣はそそられない。

いなか育ちか、方言というより日本語自体がままならない。

世間話もいっこうに盛り上がらないし、しゃべっている事の半分ぐらいは理解できないことが多いのだ。

いつも店に入ると「森下さん、いらっしゃい」といわれるが、たまにメガネとか、左分けを右分けに髪型を変えたときなどは無口だ。

最後まで「あんただれ?」といった顔で見つめられる。

まったく世間受けしないはずだが、マスコミでよく取り上げられている。

もちろんお好み焼きの味というより、うまいものがある店といった感じである。

この間JALに乗っていたら、機内誌に名店で「きゃべつ」と取り上げられていた。

おかあちゃんが写真でのっていたが、集客に貢献するとは思えなかった。

この記事をみて「まったくなにがいいのか?」と首をかしげる人の姿が目に浮かんだ。

行ってみると「うまい」とは分かるだろうが、記事から「なんでこんなに注目されるのかが分からない」と思う人は多いと思う。

しかし、あちこちに出ている記事内容を見ると、だいたい同じことが書いてあるのがわかる。

「昔ながらの店」「人のいいおかあさんが切り盛りする」「家のような落ちつき」というように。

たしかこういった言葉は、東京や大阪の老舗で活躍する飲食店が言われている評価と同じである。

「いい店は、こう言われる店か」と思ってみると、値段が高くとも長年のリピートをとり続け、たえず新規客から「あこがれの店だ」と言われる秘訣はこれなのかといいたくなる。

落ち着ける、ゆったりできる


「家のようなおちつき」という言葉で思い出すのが、おかあちゃんの出身地である瀬戸内の「家島」という名の島。

名の由来の一説には、その昔神武天皇が瀬戸内海を移動中に嵐にあい、激しい雨風を避けて寄港した際に波の静かさをみて「家の中のようだ」と例えたことだという説があるという。

その言葉通りというか、おかあちゃんの振る舞いは「家の中のようだ」と感じさせてくれる。

母親とはこういうものであったな、と思い出させてくれるのである。

「落ち着ける」「ゆったりとした時間が味わえる」というのは、飲食店にはとても重要な事である。

家で済ませばいい食事を外で食べるのだから、それ相当のメリットがなければならない。

とどのつまり「メリットはなにか?」と聞かれたら「安さ」「早さ」ではない。

それだと家で作るのには勝てない。それ相当の「うまさ」がなければだめ。

「いごこちの良さ」という満足感がなければだめなのだ。

エグゼクティブになればなるほど、急いで食事をするのはイヤだろう。

じっくりと味わい、優雅な時間を過ごしたい。

その店なりにどう感じさせるかがポイントで「きゃべつ」はそれができているのである。

また作る側にも「いいものをつくるのに手間をかける」ということに価値を感じるだろう。

「これは、手間がかかっても、こうして、こうやって食べるのが1番」と自信満々にいう。

両手を広げ、自信ありげに迎えられ、何も言わずスポッと抱えられてしまう。

こちらは、言われるとおりに抱えられるだけで満足するのである。


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